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※本記事は、銀行の両替レート(TTS・TTB・現金レート)と、ニュースやFXの画面に出るレートの違いを、日本銀行・金融庁・税関・銀行の公表資料にもとづいて整理した一般的な解説です。特定の両替の方法・金融機関・取引をすすめるものではありません。記事中のレートは2026年10月9日の一例で、レートや手数料は日々・場所ごとに変わります。実際の条件は、利用する金融機関や両替所で確認してください。
海外旅行の前に銀行や空港でレート表を見ると、ニュースで聞いた「1ドル=○円」と数字が合わず、戸惑うことがあります。これは誰かがごまかしているのではなく、同じ「ドルと円の交換」でも、取引する場所と相手によって値段が分かれているためです。
この記事では、まどか先生が①為替の市場の2つの層、②銀行のレート表に並ぶTTS・TTB・TTM、③現金の両替のレート、④FXの画面のレートとの違い、⑤両替の前に確かめておきたいことを順番に整理します。円安・円高が暮らしにどう関わるかは 円安・円高って生活にどう関係するの?|身近な例でまどか先生がやさしく解説 でまとめています。
為替レートは1つじゃない|「銀行どうし」と「お客さん向け」の2つの層
日本銀行の「教えて!にちぎん」では、外国為替市場を円やドルなどの異なる通貨を交換(売買)する場と説明し、特定の場所や建物を指すのではなく、取引の枠組み全体を指す言葉だとしています。そのうえで、市場での取引を次の2つに分けています。
個人や企業が、銀行などの金融機関と行う取引です。旅行の前に銀行で円をドルに替えるのも、ここに入ります。
金融機関どうしが、直接または外為ブローカー(仲介会社)を通じて行う取引です。大きな金額がやりとりされる、いわば「卸売り」の市場です。
ニュースで「1ドル=○円」と伝えられるのは、一般に市場で取引されている水準です。東京市場の取引のようすは、日本銀行の「外国為替市況(日次)」などで確認できます。銀行の窓口の値札は、この市場の水準をもとに、銀行が自分で決めて公表するものです。
銀行のレート表に並ぶ「TTS・TTB・TTM」の意味
| ことば | 読み方のイメージ | どんなときに使う? |
|---|---|---|
| TTS | 銀行がお客さんに外貨を売るときのレート | 円を外貨に替えるとき(円→ドル) |
| TTB | 銀行がお客さんから外貨を買うときのレート | 外貨を円に戻すとき(ドル→円) |
| TTM(仲値) | TTSとTTBのまん中の値 | 基準になる値。銀行の表では(TTS+TTB)÷2で求めると説明されている |
TTSは「Telegraphic Transfer Selling」、TTBは「Telegraphic Transfer Buying」の略で、もともとは送金(電信)で外貨をやりとりするときのレートを指します。外貨預金や外国への送金など、現金のお札を受け渡ししない取引で使われるのが一般的です。
「売る」「買う」は銀行から見た言葉
いちばん混乱しやすいのが、この点です。TTSの「S(売る)」は、銀行がお客さんに外貨を売るという意味です。お客さんの立場では「ドルを買う」ときに使うのがTTSになるため、言葉の向きが逆に感じられます。
実際の表で見てみる(2026年10月9日の一例)
三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場(2026年10月9日分)では、米ドルとユーロが次のように示されていました。TTMは、表の注記にある(TTS+TTB)÷2で計算した値です。
| 通貨 | TTS(円→外貨) | TTM(まん中) | TTB(外貨→円) | TTMからの差 |
|---|---|---|---|---|
| 米ドル | 159.17円 | 158.17円 | 157.17円 | それぞれ1.00円 |
| ユーロ | 178.89円 | 177.39円 | 175.89円 | それぞれ1.50円 |
出典:三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場(2026年10月9日分)(三菱UFJリサーチ&コンサルティングのサイトに掲載・2026年10月11日に確認)。レートは日々変わります。取引の際は同行の本支店の店頭で確認するよう注記されています。
1万円を米ドルに替える:10,000円 ÷ 159.17円 = 約62.83ドル
そのドルをすぐ円に戻す:62.83ドル × 157.17円 = 約9,874円
→ レートが変わらなくても、往復で約126円少なくなります。これが「レートの幅」による実質的なコストです。外貨預金のコストを往復で見る考え方は FXと外貨預金の違いは?6つの見どころをまどか先生がやさしく整理 でも説明しています。
現金の両替は、さらに幅が広い|「現金販売レート」と「現金買取レート」
同じ三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場(2026年10月9日分)には、米ドルとユーロの外貨現金の売買相場も載っていました。
| 通貨 | 現金の販売レート(円→外貨) | TTM | 現金の買取レート(外貨→円) | TTMからの差 |
|---|---|---|---|---|
| 米ドル | 160.97円 | 158.17円 | 155.17円 | 販売+2.80円/買取−3.00円 |
| ユーロ | 181.39円 | 177.39円 | 173.39円 | それぞれ4.00円 |
出典:三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場(2026年10月9日分)。TTMはTTSとTTBの平均で計算。
現金のレートは、TTS・TTBよりも幅が広く設定されていることが分かります。その理由として一般に、お札を海外から運んだり、金庫で保管したり、本物かどうかを確かめたりする手間とコストがかかることが挙げられます。お札の受け渡しをともなうぶん、送金や預金より費用がかかる、というイメージです。
1万円を米ドルの現金に替える:10,000円 ÷ 160.97円 = 約62.12ドル
そのドルを現金のまま円に戻す:62.12ドル × 155.17円 = 約9,640円
→ レートが変わらなくても、往復で約360円少なくなります(TTS・TTBの例の約3倍)。
※実際にはお札の単位があるため、ちょうど62.12ドルを受け取れるわけではありません。
空港・街の両替所・ほかの銀行は、それぞれレートを決めている
上の表は、ひとつの銀行が公表した一例です。ほかの銀行、空港の両替所、街の両替所、海外の両替所などは、それぞれが自分でレートや手数料を決めています。同じ日の同じ通貨でも、場所によって数字が違うのはこのためです。また、レートとは別に両替の手数料がかかる場合や、扱っている通貨・お札の種類が限られる場合もあります。
FXの画面のレートは何が違う?
金融庁はFX(外国為替証拠金取引)を、証拠金を差し入れて、2つの国の通貨の為替相場を予測して売買を行う金融商品と説明しています(出典:金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」)。銀行の両替は「円を払って外貨を受け取る」取引ですが、FXはレートが動いたぶんの差額をやりとりするのが基本の仕組みです。利益や損失が生まれる流れは FXってどうやって利益が出るの?|為替差益とスワップのしくみを、まどか先生がやさしく解説 で、スプレッドの考え方は FXスプレッドの仕組みや取引への影響を解説|FX会社選びのポイントも紹介! で説明しています。
| 見るところ | 銀行の送金・預金のレート(TTS/TTB) | 現金の両替 | FX |
|---|---|---|---|
| 何をする取引? | 円と外貨を交換して、口座で外貨を持つ・送る | 円と外貨のお札を交換する | 証拠金を預けて、為替レートの変動による差額をやりとりする |
| 手元に来るもの | 外貨預金口座の外貨や送金 | 外貨のお札 | 基本は円の損益(お札は受け取らない) |
| 値段の幅 | TTSとTTBの差 | 現金の販売と買取の差(TTS/TTBより広いことが多い) | 売値と買値の差(スプレッド) |
| 主なリスク | 円に戻すときのレートで損をすることがある | 使い残しを戻すときの往復の差・為替の変動 | レバレッジで損失がふくらむ・証拠金以上の損失のおそれ |
FXの画面の幅が銀行の表より小さく見えても、それは別の取引の値段です。FXは旅行のお札を用意するための仕組みではなく、金融庁が説明しているとおり証拠金以上の損失が生じるおそれがあり、元本も利益も保証されない取引です。相場が急に動いたときは、ロスカット(強制的な決済)が働いても証拠金を上回る損失が出ることがあります。「レートの幅が小さいから」という理由だけでFXを始めるのは、目的とリスクが合っていません。
ニュースの「1ドル=○円」で両替できないのはなぜ?
整理すると、次の3つは別の場所の値段として見るとすっきりします。
- ニュースの数字:市場で取引されている水準。刻々と動く
- 銀行の表(TTS・TTB・現金):その銀行が市場の水準をもとに決めた窓口の値段。例に挙げた銀行の表は、毎日11時ごろに更新すると案内されていた
- FXの画面:FX会社が示す売値と買値。取引の中身は両替ではない
銀行の表が「11時ごろ」に更新されるということは、その後に市場が大きく動いても、窓口の値段がすぐ同じだけ動くとは限らないということでもあります。両替する直前に、その場のレートを確かめるのが確実です。
両替する前に確かめておきたい5つのこと
お札に替えるなら現金のレート、外貨預金や送金ならTTS・TTBが使われるのが一般的です。比べるときは、同じ種類のレートどうしで比べます。
レートの幅のほかに、両替手数料がかかる場合があります。「レートが良く見える」だけで判断せず、最終的に受け取る金額で見るのが確実です。
使い残しを円に戻す可能性があるなら、替えるときのレート(販売)と戻すときのレート(買取)の両方を見ておきます。必要な金額を先に見積もっておくと、往復の差を小さくしやすくなります。
レート表には公表の日付や時刻があります。市場が動けば窓口の値段も変わるため、前の日に見た数字と同じとは限りません。
税関によると、現金(円・外国通貨)、小切手(トラベラーズ・チェックを含む)、約束手形、有価証券の合計が100万円相当額を超える場合は、出国・入国のときに「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を税関に出す必要があります(北朝鮮を仕向地とする輸出は10万円相当額)。くわしくは 税関「支払手段等の携帯輸出入の手続」 で確認してください。
外貨預金・FXとの関係を整理する
また、FXの画面では「USD/JPY」のように2つの通貨をセットで表示します。この表し方は、両替で「円とドルを交換する」と考えるのと同じ発想です。読み方は FXの通貨ペアとは?ドル円の読み方とクロス円の違いをまどか先生がやさしく解説 で、FXそのものの全体像は FXとは何?初心者が押さえるべき基礎知識と取引の始め方 で確認できます。なお、FXには店頭FXと取引所FXという2つの取引の形があり、その違いは くりっく365(取引所FX)と店頭FXの違いは?仕組みと証拠金の預け先をやさしく解説 で整理しています。
初心者がつまずきやすい3つの勘違い
①「TTSは自分が売るときのレート」
TTSの「売る」は銀行が売るという意味です。お客さんが円を外貨に替える(外貨を手に入れる)ときに使うのがTTSです。主語は銀行、と覚えておくと取り違えにくくなります。
②「ニュースのレートで両替できる」
ニュースの数字は市場の水準で、窓口のレートは銀行などが決めた値段です。窓口では、TTS・TTBや現金のレートとして、市場の水準に幅が上乗せされた数字が示されます。
③「FXのほうが幅が小さいから、両替の代わりになる」
FXは両替ではなく、為替レートの変動による差額をやりとりする取引です。レバレッジで損失が大きくなるおそれや、証拠金以上の損失が出るおそれがあり、目的もリスクも両替とは異なります。FXのリスクの全体像は FXの危険性とは?6つのリスクと失敗しないための回避策を解説 にまとめてあります。
両替のレートについて、よくある質問
TTMで両替してもらうことはできますか?
TTMはTTSとTTBのまん中の基準の値で、窓口でお客さんが円と外貨を交換するときは、一般にTTSやTTB、現金のレートが使われます。具体的な条件は、利用する金融機関の案内で確認してください。
出発前と、旅行先に着いてから両替するのでは、どちらが良いですか?
レートも手数料も、場所・日・金額によって変わるため一概には言えません。比べるときは、同じ金額を両替したときに最終的に受け取る金額で見比べるのが分かりやすい方法です。
レートが毎日変わるなら、安い日を待ったほうがいいですか?
為替レートがこの先どちらに動くかは、誰にも分かりません。待っている間にレートが不利な方向に動くこともあります。旅行の両替は「旅行に必要な外貨を用意する」ことが目的なので、必要な時期と金額から考えるのが基本です。
余った外貨は、そのまま持っていても大丈夫ですか?
持っておくこと自体はできますが、円に戻すときのレートしだいで、替えたときより円の金額が少なくなることも、多くなることもあります。戻すときは現金の買取レートが使われるのが一般的で、TTBより不利な値になることが多い点も知っておくと安心です。
まどか先生のまとめ
- 為替の市場には、銀行どうしのインターバンク取引と、お客さん向けの対顧客取引の2つの層がある
- 銀行のレート表のTTSは円→外貨、TTBは外貨→円、TTMはそのまん中。主語はいつも銀行
- 現金の両替のレートは、TTS・TTBよりさらに幅が広いことが多い
- 替えて戻すと、レートが変わらなくても往復の差のぶん円が減る
- FXの売値・買値は別の取引の値段。FXは両替の代わりではなく、損失のリスクがある取引
両替とFXの違いが分かったうえで、FXの口座そのものに興味が出てきた場合は、まず会社ごとの条件の違いを知るところから始めるのが順番です。スプレッドや通貨ペアの数、ツールの使いやすさなど、口座を選ぶときの見どころは 初心者から上級者まで!おすすめのFX口座と選び方のポイント に整理してあります。
この記事の出典(2026年10月11日に確認)
- 日本銀行「教えて!にちぎん 外国為替市場とは何ですか?」
- 三菱UFJ銀行公表の対顧客外国為替相場(2026年10月9日分・三菱UFJリサーチ&コンサルティングのサイトに掲載)
- 金融庁「いわゆる外国為替証拠金取引について」
- 税関「支払手段等の携帯輸出入の手続」
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※本記事は一般的な情報提供であり、特定の両替の方法・金融機関・取引・投資判断を推奨するものではありません。相場の先行きを予測するものでもありません。記事中のレートは2026年10月9日の一例です。FXは元本が保証されない取引で、損失が生じるおそれがあります。最新の条件は各金融機関・税関・金融庁の情報で確認し、投資は自己責任で、余裕資金の範囲で行ってください。
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